top of page
検索
  • 執筆者の写真nigetasakana1231

無題の人生

僕が「逃げた魚」という名義で1人でもう一度音楽を始めようと思ったキッカケの曲。昨年の末頃に出来た新しめの曲で、「埋没」というタイトルもコンセプトもこの曲からイメージしていった。いわゆるリードトラックというやつです。

この曲だけだも聞いてくれたら後はもう別にいいってくらいに、言いたい事の全てを込めたれた気がする。

まずは、この曲を通して「埋没」というアルバムのコンセプトについて述べておこう。


埋没=myボツ=僕のボツ曲集


まぁ、ただのダジャレなんだけどね。

アサモドキで音源化出来なかった曲とか、youtubeに上げてる弾き語り音源をちゃんと音源化してあげたくて、選曲は誰の指図も受けずに、あれもこれもと思って選んだら14曲にもなってしまったわけです。


ボツ曲を14曲もお金をもらって聞いてもらうなんて、とんでもないという事で、今回はCDの販売はナシ。ただ、ボツ曲集と言いつつも、この14曲は本当の意味ではボツ曲ではなくて、本当のボツ曲は僕のスマホのボイスメモとか脳の記憶の片隅とか夢の彼方に無数に存在している。


最近、仕事に必要な自主保全士っていう製造現場の資格の勉強してるんだけど、ハインリッヒの法則ってのがあって。

1件の重傷者が出た事故の下には29件の軽傷の事故があり、さらにその下には300件のヒヤリとしただけの怪我のない事故があるというのが、ハインリッヒの法則。


曲も同じだなと思った。正式なCD音源になる1曲の下には29曲の音源にならなかったデモ音源があって、さらにその下には300曲の歌詞もコードもないメロディだけのボイスメモの鼻歌だったり、仕事中に一瞬浮かんで忘れちゃったフレーズだったり、夢で口ずさんでいた儚い旋律がある。


数字はちょっと盛りすぎかもしれないけど、感覚的にはそのくらいの比率に近くて、ある意味音源化に辿り着く曲って奇跡だとも言えるんだよね。


だから、没曲集っていうのは実は大きな卑下で、実は奇跡の14曲と言いたいくらいの14曲なんです。それでも埋没というタイトルを付けたのは、きっと僕の自信のなさのせいなんだと思う。


今回収録されている曲のほとんどはyoutubeに弾き語りデモ音源をアップロードしている。ただのデモ音源なので音質も悪い未完成品だから当たり前なんだけど、どの曲もすごく再生数が少ない。そもそも再生数が欲しくて投稿している訳じゃないんだけど、自分でその曲を聞き返していると「やっぱあんまり良くないな」とか「歌もギターも下手だな」とか「歌詞もコードもミスってるな」とかクオリティがどんどん気になってしまって、「そりゃこんなもん評価されないよな」と自分でネガティブな納得をしてしまうという心の中の一連の流れが曲を投稿する度にあった。

バンドメンバーに聞かせてみても微妙な反応だったりして、これはやっぱりボツだなと一度はゴミ箱へ投げ捨てた事もあった。


だけど、たまに嬉しいコメントがついていたり、顔も知らないフォロワーのバンドマンが絶賛してくれたり、憧れの人が僕の曲をSNSで紹介してくれたりして、僕はゴミ箱のその曲をもう一度拾い出してみたいと思った。それが、今回のアルバムを作りたいと思った動機だった。


「無題の人生」という曲は、何曲か続けてボツ曲を作って、悶々として眠れずに夜中に起きて不貞腐れながらイントロのギターフレーズをなんとなく弾いていたら出来た曲で、まさに何曲ものボツ曲の上に出来たという実感がとても強い曲だ。


曲が出来ないのはしんどい。せっかくいいメロディでも、どうしても歌詞が乗らずに苦しんだり、良いのが出来たと思ったら、好きなバンドの曲のメロディと丸かぶりだったり。自分では考え抜いた曲構成でもメンバーにBメロがいらないって言われたり。

日々の生活のストレスの捌け口に、曲を作ってるようなものなのに、曲が出来ないことで更にストレスがたまる。こんな辛いならもう曲なんか作らずにずっとゲームしてたらいいじゃないかと思う時もある。

だけど、気付いたらギターを弾いている。


そうして、やっと完成した1曲ですら、この広い世界では当たり前のように他の誰かの曲に埋もれていく。ヒットチャートを独占するメジャーアーティストの似たような愛の歌やアイドルソング。お金で広告を出してる商業音楽に人の目線と耳は奪われる。存在を知ってもらえさえしない、ちっぽけな僕の音楽。

こんなの僕の人生と同じじゃないかと思った。


たくさんの辛い事があった。時には死のうと思った。

そんな夜を超えて生まれた、僕が生きた証。だけど、それはきっと誰の目に触れる事も褒められる事もない。この世界の大多数が、他人の人生になど興味はないのだから。

ドキュメンタリー番組が組まれるような波瀾万丈な人生を送った人間なんてほんの一握りで、自分にとっての不幸も挫折も世間ではよくある話で、一々テレビで取り上げていたらチャンネルがいくつあっても足りない。


誰の記憶に残る事もなく、忘れられていく僕の人生。

誰の耳にも届くことなく、消えていくメロディ。


だけど、僕だけは僕が生きた事を覚えているし、僕だけはそのメロディーを知っている。


それなら、それを書き残す事も録音する事も僕の自由で、誰も興味がないのは分かった上で、それでもゴミ箱をひっくり返してもいいんだと思う。

僕が捨ててしまったそれは、自分じゃない誰かから見ればゴミだろう。それが部屋に散らかっているのが恥ずかしいから、僕はそれをゴミ箱に捨てた。

だけど、この部屋に誰も来ないなら、別に散らかっていてもいいし、僕にとって実はそれはゴミじゃなくて間違って捨てた大事なメモかもしれない。


そして、もしも君がこの部屋を見つけてくれたのなら、ノックせずに入ってくれて構わない。鍵は開けとくよ。散らかってるけど、こんな部屋を訪ねてくれた君は多分、僕にとって気の置けない友人みたいなものだから、多少散らかっていても気にしないでしょ?


それで、たわいの無い話をして僕がトイレにでも行った隙に、散らかったゴミの一つを拾って広げてみてよ。皺くちゃで読みにくいかもしれないけど、それが僕の言いたい事だよ。

閲覧数:11回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


bottom of page